認知症の人が毎日同じことを聞く本当の理由
認知症の方と関わっていると、
「さっき説明したばかりなのに、また同じことを聞かれた…」
そんな場面に、何度も直面すると思います。
訪問看護や在宅介護の現場でも、
- 今日は誰が来るの?
- ここはどこ?
- 何時に帰れるの?
といった質問が、毎日のように繰り返されます。
つい「忘れているだけ」と思われがちですが、
実はこの行動には、**認知症ならではの“深い理由”**があります。
記憶が「抜け落ちる」感覚が起きている
新しい情報が定着しにくい
認知症では、特に
直前の出来事や新しい情報を記憶する力が低下しやすくなります。
説明を受けたその瞬間は理解できていても、
数分〜数十分後には、その記憶が自然と消えてしまうことがあります。
これは「聞いていない」「理解していない」のではなく、
記憶として脳に残りにくい状態が起きているためです。
本人には「忘れた自覚」がない
ここがとても重要なポイントです。
多くの場合、本人には
「忘れてしまった」という自覚がありません。
- 何か大事なことが分からない
- でも、何が分からないのかも分からない
その結果、不安だけが残り、
「確認しなければ」という衝動から、同じ質問を繰り返します。
繰り返し質問は「不安を和らげる行動」
答えよりも「安心」を求めている
訪問看護の現場で感じるのは、
多くの質問が情報収集ではなく、安心確認だということです。
同じ答えを何度も聞くことで、
- 大丈夫
- 問題ない
- 一人じゃない
と感じたい気持ちが強く働いています。
質問は、安心を得るための手段でもあるのです。
「心理的安全性」が揺らいでいる
認知症になると、
- 先の予定が分からない
- 今の状況が把握しづらい
- 時間の流れが曖昧になる
といった状態が重なり、
常に不安を抱えやすくなります。
その不安が、
「何度も同じことを聞く」という形で表に出てきます。
時間や状況の感覚がずれている
本人は「初めて聞いている」感覚
介護する側から見ると
「今日だけで何回目?」と思ってしまいますが、
本人の感覚では、
毎回“今、初めて聞いている”状態であることも少なくありません。
そのため、繰り返している自覚がなく、
自然な確認行動として質問が出てきます。
現実をつなぎ止めるための質問
「今がいつか」「次に何が起こるのか」が分かりにくくなると、
人は強い不安を感じます。
質問は、
現実を確認し、安心できる場所に戻るための行動とも言えます。
否定されると不安はさらに強くなる
「さっき言ったでしょ」は逆効果
つい出てしまいがちな言葉ですが、
- さっき言ったでしょ
- 何回も同じこと聞かないで
こうした反応は、本人にとって
- 自信を失う
- 混乱が増す
- 不安が強まる
という悪循環を生みやすくなります。
共感が安心につながる
質問の内容そのものよりも、
- 心配なんですね
- 一緒に確認しましょう
- 大丈夫ですよ
という共感と安心の姿勢が、
気持ちを落ち着かせる助けになります。
訪問看護の現場で意識している関わり方
毎回「初めて」の気持ちで対応する
同じ質問でも、本人にとっては初めてのことがあります。
訪問看護では、
- 落ち着いた口調
- 同じ説明を繰り返す
- 否定しない
この積み重ねを大切にしています。
環境で不安を減らす工夫
言葉だけに頼らず、
- 見やすい時計
- 予定表やホワイトボード
- 本人がよく座る場所への掲示
など、視覚情報を活用することで、
質問の回数が減るケースも多くあります。
まとめ|繰り返し質問は「安心を求めるサイン」
認知症の人が毎日同じことを聞くのは、
単なる物忘れではありません。
それは、
- 不安
- 混乱
- 安心したい気持ち
が表に出た、大切なサインです。
「また聞いてる」と捉えるのではなく、
「安心を求めているんだ」と理解することで、
関わり方は大きく変わります。
訪問看護や介護の現場でも、
安心感を届ける関わりが、
本人の穏やかな生活につながっていきます。


