認知症の本人が一番怖がっていること

認知症になると、「何も分からなくなる」「不安も感じなくなる」と思われがちです。

しかし実際はその逆で、本人は強い不安や恐怖を抱えていることが少なくありません。

周囲からは見えにくいですが、認知症の方の内側には“言葉にならない怖さ”があります。

今回は、本人が何を一番怖がっているのかを考えていきます。

一番の恐怖は「分からなくなる自分」

認知症の方が最も怖いと感じやすいのは、「自分が分からなくなっていくこと」です。

・さっき言われたことを思い出せない

・知っているはずの道が分からない

・物の置き場所が思い出せない

その瞬間、「あれ?おかしいな」と本人も気づいています。

周囲から見ると小さな変化でも、本人にとっては“暗闇の中で足元が急に消えるような感覚”。

この感覚が積み重なることで、大きな不安につながります。

「責められること」への恐怖

物忘れや勘違いを指摘されることも、強いストレスになります。

「さっき言ったでしょ」

「また同じこと聞いてるよ」

何気ない一言でも、本人にとっては“できなくなった自分”を突きつけられる瞬間です。

自信を失うことは、恐怖そのもの。

怒られることよりも、「見放されるのではないか」という不安を抱えているケースもあります。

「置いていかれること」への不安

認知症の方は、環境の変化にも敏感です。

知らない場所、知らない人、急な予定変更。

理解が追いつかないまま状況が進むと、霧の中に一人放り込まれたような強い混乱を感じます。

その根底にあるのは、「ひとりになるかもしれない」という不安。

だからこそ、何度も同じことを確認したり、家族の姿を探したりするのです。

訪問看護で大切にしていること

訪問看護の現場では、「できないこと」よりも「感じている不安」に目を向けます。

・否定しない

・急がせない

・安心できる声かけを続ける

安心感があると、不安は少しずつ和らぎます。

大切なのは、“正しさ”よりも“安心”です。

記憶を正すことより、気持ちを受け止めることが支えになります。

家族ができる 少しでも不安をやわらげるためのワンポイント

間違いを正すより、感情を受け止める

事実と違うことを話していると、つい訂正したくなります。

しかし、本人が感じているのは「事実」よりも「感情」です。

たとえば「財布を盗られた」と訴えた場合、本当に伝えたいのは“怖い”“不安”という気持ち。

そのときは

「不安だったね」

「びっくりしたよね」

と感情に寄り添う声かけが安心につながります。

正しさよりも、安心感を優先することが大切です。

「ありがとう」は不安をやわらげる言葉

認知症が進むと、「役に立っていないのでは」という不安を抱く方もいます。

そんなとき、

「助かったよ」

「ありがとう」

この一言が、大きな支えになることがあります。

感謝の言葉は、自信を取り戻すきっかけになります。

不安を完全に消すことはできなくても、安心を積み重ねることはできます。

まとめ

認知症の本人が一番怖がっているのは、「分からなくなる自分」と「見放される不安」です。

物忘れそのものよりも、その先にある孤独や自信の喪失が大きな恐怖になります。

周囲ができることは、間違いを正すことではなく、安心できる存在でいること。

不安を理解しようとする姿勢が、本人にとって何よりの支えになります。

認知症ケアは、記憶へのアプローチではなく、心へのアプローチ、つまり「感情のケア」が鍵になります。

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