【なぜ夜に落ち着かなくなる?】認知症の人が夕方から不安定になる本当の理由と対処法
「昼間は穏やかだったのに、夕方になると急にそわそわする」
「夜になると“帰らなきゃ”と言い出す」
認知症の方を支えているご家族や介護者の多くが、こうした経験をしています。
この現象は、**“夕暮れ症候群(サンセット症候群/Sundowning syndrome)”**と呼ばれています。
決して性格の問題ではありません。
わがままでもありません。
そこには、脳の変化による明確な理由があるようです。
この記事では、
- 認知症の人が夜に不安定になる原因
- 背景にある脳と身体の変化
- 訪問看護・介護現場で実践している具体的対策
を分かりやすく解説します。
夕暮れ症候群とは?
夕方から夜にかけて、
- 不安が強くなる
- そわそわして歩き回る
- 怒りっぽくなる
- 帰宅願望が強まる
- 不眠になる
といった症状が出やすくなる状態を指します。
実際の現場でも、「夕方17時前後」が一つの分岐点になることが多いと感じています。
夜に不安定になる4つの主な原因
① 見当識障害による“時間の混乱”
認知症では、
- 今が何時か
- ここがどこか
- 何をしているのか
を把握する力(見当識)が低下します。
日中は、
✔ 太陽の光
✔ 人の出入り
✔ 生活音
が手がかりになります。
しかし夕方になると、
- 薄暗い光
- 静かな空間
- 活動の減少
によって「状況判断のヒント」が減ります。
その結果、
「ここはどこ?」
「帰らなきゃいけないのでは?」
という不安が強くなります。
② 体内時計(概日リズム)の乱れ
人間には約24時間周期の**概日リズム(サーカディアンリズム)**があります。
このリズムを調整しているのが脳の視交叉上核です。
認知症ではこの調整機能が弱くなり、
- 昼夜逆転
- 夕方の混乱
- 夜間覚醒
が起きやすくなります。
夕方は、
✔ 眠気
✔ 覚醒
✔ 疲労
が混ざり合う時間帯。
脳がうまく整理できず、不安定になりやすいのです。
③ 一日の疲労の蓄積
認知症の方にとって、
- 会話
- 移動
- 環境変化
は想像以上にエネルギーを消耗します。
夕方になると、
- 判断力の低下
- 感情コントロールの低下
が起こりやすくなります。
訪問看護の現場でも、
午前中より夕方のほうが混乱が強いケースは珍しくありません。
これは“性格”ではなく、脳の疲労です。
④ 過去の記憶が強くなる
認知症では、
- 新しい記憶は弱く
- 昔の記憶は残りやすい
という特徴があります。
夕方の静かな時間帯は、感情記憶が浮上しやすくなります。
例えば、
- 子どもを迎えに行かないと
- 仕事に戻らなければ
- 実家に帰らなければ
という“過去の役割”が現在だと錯覚されることがあります。
これが帰宅願望につながります。
現場で実践している具体的対処法
① 夕方以降は刺激を減らす
✔ テレビの音量を下げる
✔ 強い光を避ける
✔ 急な予定変更をしない
環境の安定が何より重要です。
② 否定せず安心を優先する
NG例:
「さっき言いましたよ」
「ここが家です」
推奨:
「不安になりますよね」
「一緒に確認しましょう」
“正しさ”より“安心”を優先します。
③ 日中に光と活動を取り入れる
日光は体内時計を整えます。
✔ 午前中の散歩
✔ 窓際での時間
✔ 軽い体操
これだけでも夜の落ち着きが変わることがあります。
④ 夕方ルーティンを固定する
毎日同じ流れを作ると、
「次に何が起こるか」
が予測できるようになります。
例:
17:00 お茶
18:00 夕食
19:00 入浴
20:00 テレビ
21:00 就寝
見通しが安心感につながります。
まとめ|夜の不安定さは“助けを求めるサイン”
認知症の人が夜に不安定になるのは、
- 見当識障害
- 体内時計の乱れ
- 疲労
- 過去記憶の影響
が重なった結果です。
本人にとっては、
世界が突然わからなくなる恐怖に近い感覚です。
だからこそ、
✔ 安心できる声かけ
✔ 安定した環境
✔ 日中の活動調整
が重要になります。
夜の不安は、
“問題行動”ではなく“サイン”。
背景を理解することで、対応は大きく変わります。

