老人ホーム入居後にやっぱり家に「帰りたい」と言い出したときの対応方法

老人ホームへ入居したあと、ご本人から「家に帰りたい」「ここにはいられない」と言われて戸惑い、胸を痛めた経験はありませんか?

ご家族としては、本人の安全を思い、何度も家族会議を重ね、罪悪感と戦いながらようやく施設を選び、これでひと安心だと思っていた矢先の言葉かもしれません。

そのため、「やっぱり施設に入れたのは間違いだったのかな」「無理に入居させて親を苦しめているのでは」と自分を責めてしまう方も少なくありません。

しかし、老人ホームへの入居後に「帰りたい」と訴えることは、決して珍しいことではありません。

必ずしも「その施設が本人に合っていない」という意味ではなく、環境の変化に伴う一時的な心理が関係しているケースがほとんどです。

今回は、入居後に「帰りたい」と言われたときの背景にある理由や、ご家族がとるべき対応について解説します。

「帰りたい」と言うのはごく自然な防衛反応

老人ホームへの入居は、高齢のご本人にとって人生最大級の環境の変化です。

長年住み慣れた我が家を離れ、以下のような劇的な変化を同時に受け入れることになります。

・起床や食事、入浴などの生活リズムが一変する

・周囲のスタッフや他の利用者など、知らない人ばかりになる

・自分の部屋にあった使い慣れた家具や私物が少なくなる

これだけの変化があれば、大人であっても最初のうちは強い不安や寂しさを感じて当然です。

その張り裂けそうな心の SOS が「家に帰りたい」という言葉になって現れているのです。

「帰りたい」の背景にある本当の気持ち

「家という場所」ではなく「安心感」を求めている

「家に帰りたい」と言われると、私たちは文字通り自宅の建物をイメージしてしまいます。

しかし実際には、建物そのものに戻りたいというよりは、以下のような心の叫びであるケースが多いのです。

・今まで通り、自分のペースで過ごせる気楽さが恋しい

・この寂しさや不安な気持ちを、家族に分かってほしい

・自分が見捨てられたのではないかと不安で、安心させてほしい

必ずしも「今すぐ退去して、絶対に自宅に戻る」という確定した意思とは限りません。

認知症の特性が関係しているケース

認知症がある場合、自分がなぜ今この場所にいるのか(施設に入所した経緯など)の記憶が抜け落ちてしまうことがあります。

また、現在ではなく、自分が元気だった頃の古い記憶が強く呼び起こされ、「子供が待っているから当時の家に帰らなければ」「仕事に行かなければ」という強い使命感から帰宅を訴えていることもあります。

家族が避けるべき2つの対応

1. 正論で頭ごなしに否定する

「ここが今のあなたの家でしょ」

「もう家には誰もいないから帰れないよ」

このように厳しい現実(正論)を突きつけて否定してしまうと、ご本人は自分の存在や感情を全て拒絶されたと感じ、さらに強いパニックや激しい怒り、あるいは深い抑うつ状態に陥ってしまいます。

2. 感情的に説得しようとする

ご家族側もこれまでの介護疲れや精神的な負担から、つい「せっかく高いお金を払って入ったのに」「私の気持ちも考えてよ」と感情的に言い返したくなってしまうことがあります。

しかし、無理に説得しようとすればするほど、ご本人の「帰りたい」という執着が強くなるという悪循環を招きます。

家族が心がけたい正しい寄り添い方

「帰りたい」と言われたときは、まずはその言葉の裏にある感情をそのままオウム返しにするように受け止めるのが基本です。

「そうだね、お家が恋しくなるよね」「急に引っ越してきて不安だよね」と言葉をかけ、手を握るなどして安心感を与えます。

「自分の味方がここにいる」「気持ちを理解してもらえた」と感じるだけで、張り詰めていた気持ちがスーッと落ち着く方は非常に多いのです。

施設スタッフとの密な情報共有が解決の鍵

面会時に「帰りたい」と泣かれても、ご家族が帰った後の日中の様子は案外落ち着いている、ということはよくあります。

まずは施設のケアマネジャーや介護スタッフに相談し、以下の点を確認してみましょう。

・家族がいない日中の時間帯、食事はしっかり食べられているか

・レクリエーションに参加したり、他の利用者と挨拶を交わしたりできているか

・夜はしっかり眠れているか

日中の様子を知ることで、一時的な寂しさによるものなのか、本当に施設での生活になじめず苦しんでいるのかの原因が見えてきます。

環境に慣れるまでの「時間」を味方につける

入居してすぐの場合は、どれほど素晴らしい施設であっても、新しい環境になじむまでに数週間から3ヶ月ほどかかるのが一般的です。

最初は毎日のように帰宅を訴えていた方でも、お気に入りのスタッフができたり、気の合うお友達ができたり、施設のイベントが楽しくなったりするうちに、少しずつ「自分の居場所」として認識し、言葉が落ち着いていくケースは数多くあります。

本当に環境が合っていない場合の対応

もちろん、すべてが「時間が解決する」わけではありません。

・施設のケア方針や雰囲気が、どうしても本人の性格と合わない

・特定のスタッフや他の入居者との人間関係で強いストレスを感じている

・生活スタイル(集団行動など)にどうしても心身が拒絶反応を起こしている

このような場合は、無理に我慢させ続けることで心身の衰え(廃用症候群など)が進行してしまうこともあるため、別の施設への住み替えや、あるいは「訪問介護や訪問看護」をフル活用した在宅復帰という選択肢を含め、柔軟に再検討することも必要です。

まとめ

老人ホームへ入居したあとに「家に帰りたい」と言い出すのは、環境の変化から自分を守ろうとするごく自然な心理です。

大切なのは、その言葉を額面通りに受け取って家族が罪悪感に潰されてしまうのではなく、「今はそれだけ不安な時期なんだね」と本人の寂しさに共感してあげることです。

家族だけで悩みを抱え込まず、施設のスタッフやケアマネジャーといった周囲のプロとしっかり連携し、焦らずに「新しい我が家」に馴染んでいけるようサポートしていきましょう。

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