老人ホームに面会に来ない家族は本当に悪いのか

「もっとこまめに施設に面会に行ってあげなきゃいけないのに、全然行けていない……」

「仕事や日々の生活に追われて今月も顔を見せられなかった、親に対して申し訳ない……」

老人ホームに大切なご家族を入居させている方の中で、こうした「面会の頻度」について胸を痛め、自分を責めてしまっている方は少なくありません。

世間の一部では、「施設に預けっぱなしでほとんど面会に来ないなんて冷たい家族だ」「親不孝だ」なんていう心ない声が聞こえてくることもありますよね。

でも、現場を知る看護師やヘルパーから言わせてください。

本当に「面会に来られない=悪い家族」なのでしょうか?

介護には、外からは決して見えない、それぞれの家庭の深い事情や歴史があります。

今回は、老人ホームの面会にまつわる、ご家族の心の負担を少しでも軽くするためのお話をさせてください。

面会に行けない背景には、人それぞれの戦いがある

当たり前のことですが、面会に行く回数が多いか少ないかだけで、その家族の愛情の深さを測ることなんて絶対にできません。

面会に頻繁に行けないご家族には、以下のようなどうしても外せない現実の理由があるからです。

・毎日の仕事が激務で、施設の面会時間内に休みを作ることが物理的に難しい

・施設が自宅から遠方にあり、移動の時間や交通費の面で頻繁に行くのが厳しい

・まだ手のかかる小さな子どもの育児や、学校行事に追われている

・ご家族自身が高齢だったり、体調を崩していて自分の生活だけで精一杯

「親に会いに行きたくない」から行かないのではなく、「行きたくても今の自分の生活を守るためにどうしても難しい」というケースがほとんどなんです。

「たくさん面会に行くこと=絶対の正義」ではない

もちろん、毎日や毎週のように家族が顔を見せてくれたら、ご本人だって嬉しいですし、安心されるでしょう。

ですが、それだけが「良い家族」の証明ではありません。

現場のスタッフはよく知っていますが、面会回数は少なくても、以下のような形で親戚一同、全力で支えているご家族はたくさんいらっしゃいます。

・施設からの突然の電話連絡にもいつも丁寧に対応し、本人の状況を心配してくれている

・入居に必要な手続き、衣替えの衣類の郵送、毎月の支払いを滞りなくきっちり行ってくれている

・離れて暮らしていても、担当のケアマネジャーと密に連絡を取り、本人の健康を常に気にかけている

表に見える「面会」という形に現れなくても、陰でお子様としての責任をしっかり果たしている。それだけで十分に素晴らしい愛情です。

「もっと行かなきゃ」という罪悪感が一番苦しい

自分を追い詰めてしまう真面目なご家族

特に、これまで自宅で一生懸命に介護を頑張ってきた真面目なご家族ほど、

「施設に預けて楽をしてしまった」

「それなのに面会にも行かないなんて、私は本当にダメな子供だ」

と、自分を責める底なし沼にハマってしまいがちです。

でも、無理をして睡眠時間を削ったり、自分の家庭を犠牲にしてまで面会に強行軍で行く生活を続けていたら、今度はご家族の側の心や体が先にパンクしてしまいます。

家族が倒れてしまっては、それこそ元も子もありませんよね。

大切なのは、無理なく「長く続けられる」細く長い関わり方

毎週のように無理して面会に行くのが難しいのであれば、ご自身の生活のペースを一番に守りながら、以下のような別のアプローチを取り入れてみるのはいかがでしょうか。

・「毎月〇週目の土曜日の午前中だけ」と決めて、無理のないペースで顔を見せる

・直接行く代わりに、施設のタブレットやスマホを使ってオンライン通話や電話で話す

・直接会うとついお互い感情的になってしまうなら、施設スタッフに電話で体調をこまめに確認する

・「いつも応援しているよ」という気持ちを込めて、お孫さんの写真や手紙、ちょっとした差し入れを送る

そのご家庭なりの「細く、長く、無理なく続けられる距離感」を見つけることのほうが、結果的に長く親御さんを支え続けるための大切な鍵になります。

実は、施設にいる親御さんも「それぞれの生活」を送っています

もちろん、「子どもに会いたいな」と寂しがる入居者様もいらっしゃいます。

ただ一方で、私たちが現場で見ていると、以下のような親御さんの本音や一面に救われることも多いのです。

・最初は寂しがっていたけれど、今では施設のレクリエーションやお友達との会話にすっかり馴染んで忙しく過ごしている

・面会が少なくても、スタッフを信頼して穏やかに自分のペースで暮らしている

・「子どもたちも仕事や子育てで大変なんだから、私のために無理をして来なくていいよ」と、優しく家族を気遣っている

「面会が少ないから、親は毎日絶対に寂しくて惨めな思いをしているはずだ」と、ご家族の側だけで悲観的に決めつけてしまう必要はありません。

家族も、自分の人生と生活を最優先に大切にしていい!

介護や施設への入居が絡むと、私たちはつい「親の生活を何よりも最優先にしなければならない」という義務感に囚われてしまいます。

ですが、ご家族の皆様にも、一度きりの自分の仕事、自分の子育て、そして自分自身の体調や人生の楽しみがあります。

親御さんをプロのいる施設にバトンタッチした目的は、「お互いが共倒れせず、それぞれの場所で自分の人生を健やかに生きるため」だったはずです。

自分の生活の充実や笑顔があってこそ、たまに会えたときに「お父さん、調子はどう?」と心からの優しい笑顔を見せてあげられるようになります。

まとめ

老人ホームに面会にあまり来られない家族のことを、周囲の誰かが「冷たい家族だ」と責める権利なんてどこにもありません。

人には人の事情があり、面会の回数だけで親を想う心の深さは絶対に測れないからです。

「もっと行ってあげなきゃ」と自分を責めすぎてしまうのは、今すぐ終わりにしましょう。

介護は、短い距離をダッシュする徒競走ではなく、これから先も長く続いていくマラソンです。

だからこそ、主役である親御さんの安心はもちろん、支える側の皆様の「生活のゆとり」と「心の笑顔」も同じくらい大切にしながら、一番心地いい距離感で寄り添っていってくださいね。

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