「施設に慣れた」と感じるまでの期間はどれくらい?

大切な親御さんの老人ホームへの入居が決まると、一安心する一方で、ご家族の心には「新しい環境にちゃんと馴染めるだろうか……」という大きな不安が押し寄せてきますよね。

実際、入居してしばらくの間は、面会に行くたびに「ここにいたくない、家に帰りたい」「置いていかないで」と涙ながらに訴えられたり、見たこともないような暗い表情をされたりすることも少なくありません。

そんな親の姿を目の当たりにすると、ご家族としては「本当にこれで良かったのかな」「かわいそうなことをしてしまった……」と、胸が締め付けられるように苦しくなってしまいますよね。

ですが、新しい環境に慣れるまでに時間がかかるのは、人間としてごく自然なことです。

何十年も暮らしてきた愛着のある我が家を離れ、まったく新しい場所で知らない人たちと生活を始めるのですから、すぐに100%順応できなくて当たり前。

今回は、施設に慣れるまでの一般的な期間の目安や、その間に見られる心境の変化についてお話しします。

慣れるまでの期間は「人それぞれ」で正解はない

まず一番に知っておいていただきたいのは、「〇日経てば絶対に慣れる」という明確なボーダーラインはない、ということです。

親御さんのもともとの性格や健康状態、認知症の進行度合いによって、そのスピードは本当にガラリと変わります。

社交的な方や環境の変化に強い方であれば、数週間程度で「ここの生活も快適だよ」とペースを掴まれることもあります。

一方で、内向的な方やこだわりが強い方の場合は、数ヶ月から半年ほどかけて、グラデーションのようにゆっくりゆっくり馴染んでいかれることも珍しくありません。

ですから、「お隣の入居者さんはもう笑っているのに、うちの親はまだ……」と、周囲と比べて焦る必要はまったくありませんよ。

入居直後の「不安定な時期」によく見られる変化

とにかく不安と緊張がマックスになる

入居して最初の数日から数週間は、誰だって緊張の嵐の中にいます。

・いつもより表情がカチコチに硬くなっている

・話しかけても会話が少なく、元気がなさそうに見える

・部屋の中をソワソワと落ち着きなく動いている

これらはすべて、環境の変化に対して脳と心が一生懸命に適応しようと頑張っている「自然な防衛反応」です。

決して、施設が本人に合っていないというわけではないので、まずは見守ってあげてくださいね。

切実な「家に帰りたい」という訴え

入居後しばらくの間、ご家族を一番悩ませるのがこの言葉です。

この「家に帰りたい」というフレーズは、単に施設という建物への不満だけを意味しているわけではありません。

「見知らぬ場所でとにかく不安だから、私を安心させてほしい!」

「大好きな家族と離れて寂しいよ」

という、言葉にできない寂しさや不安の裏返しであることがほとんどなのです。

少しずつ馴染んできたときの「嬉しいサイン」

時間が経ち、ご本人の心が少しずつ施設に開いてくると、以下のようなポジティブな変化がポツポツと現れ始めます。

施設内での「自分の生活リズム」が整ってくる

・「〇時になったらご飯だね」と、一日の流れが分かってくる

・施設のレクリエーションやイベントに、少しずつ顔を出すようになる

・顔なじみの職員に対して、自分から「おはよう」と話しかける

毎日のルーティンや周りのスタッフの顔が分かってくることで、ご本人の中の「見通し」が立ち、不安がスーッと軽減されていきます。

表情がフワッと柔らかくなる

施設生活に安心感が出てくると、面会に行ったときのご家族への第一声や笑顔の数が明らかに変わってきます。

久しぶりに会ったご家族が、「あ、前の面会のときより肌ツヤが良いな」「表情が明るくなってホッとした」と感じられる瞬間が必ずやってきます。

認知症がある場合は、慣れるまでに「ひと工夫」の時間が必要

認知症が進行している方の場合は、自分が今なぜ新しい場所にいるのか、ここがどこなのかを頭で理解したり覚えたりすることが難しいため、さらに時間がかかることがあります。

目が覚めるたびに「ここはどこだ?」と、毎日が初めての場所に放り出されたような強い不安を感じてしまうこともあります。

ただ、だからといって「認知症があるから施設に慣れるのは無理」ということは絶対にありません。

場所そのものを頭で覚えられなくても、「いつも優しく声をかけてくれるスタッフの顔」や、「毎日同じ時間に流れる心地いい音楽」などに対して、心と体がホッとする安心感を徐々に覚えていくケースはたくさんあります。

ご家族が「焦りすぎない、引きずられない」ことが一番の薬

親御さんが寂しそうにしている姿を見ると、「やっぱり施設に入れたのは間違いだったのでは」「在宅介護に戻した方がいいのかな」と激しい後悔に襲われるかもしれません。

ですが、入居直後の最もお互いの感情が揺れ動いている時期だけで、すべてを判断してしまうのは少しもったいないです。

施設のスタッフも、ご本人が一日でも早くマイスペースを作れるよう、あの手この手で声かけや関係作りを全力で行っています。

心配なことがあれば、決してご家族だけで抱え込まず、「最近、部屋ではどんな様子ですか?」と施設にどんどん相談して、頼ってしまってくださいね。

ただし、こんな状態が長く続く場合はスタッフと要相談

数ヶ月が経っても、以下のような状態が全く改善されない場合は、関わり方や環境を見直すタイミングかもしれません。

・何ヶ月経っても強い拒絶や激しい不安が、24時間ずっと続いている

・施設に入ってから、食事の量がガクンと減って戻らない

・表情が一日中極端に暗く、部屋から一歩も出てこようとしない

このような時は、ケアマネジャーや施設の看護師とカンファレンス(話し合い)を行い、ケアの方法を優しく修正していきましょう。

まとめ

老人ホームという新しい環境に慣れるまでの期間は、本当に人それぞれです。

数週間でマイルームのようにくつろぐ方もいれば、数ヶ月かけてじっくり馴染んでいく方もいます。

入居直後の「家に帰りたい」という涙に、ご家族が過剰に罪悪感を持つ必要はありません。それは、新しい一歩を踏み出した誰もが通る、大切な心の準備期間です。

大切なのは、親御さんの底力を信じて、その子なりのペースをゆったりと見守ってあげること。

ご家族も焦らず、施設のプロたちとしっかり手を繋ぎながら、親御様が「ここも結構居心地が良いな」と思える日を一緒に待ってあげてくださいね。

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