電話が極端に増えたときに認知症患者に起きていること
「さっき電話で話したばかりなのに、また同じ内容でかかってくる……」
「仕事中や夜中でも関係なく、1日に何度も電話が鳴って困り果てている」
離れて暮らす親御さんや同居するご家族から頻繁に電話がかかってくると、どう対応していいか分からず、心身ともに疲れてしまいますよね。
「いい加減にして!」と強く言いそうになっては、あとで自己嫌悪に陥ってしまうご家族も少なくありません。
もちろん、電話が増えたからといって必ずしも認知症とは限りませんが、回数が極端に増えたり同じ内容を延々と繰り返す場合は、ご本人の頭や心の中に「SOSのサイン」が出ている可能性があります。
今回は、電話が止まらなくなってしまう背景と、ご家族の負担を減らすための対応のポイントについて解説します。
なぜ何度もかけてしまうの?ご本人の心の中で起きていること
ご本人は決して嫌がらせや怒らせたくて電話をしているわけではありません。その裏には、認知症特有の切実な理由が存在します。
1. 強い「不安感」や「孤独感」を打ち消したい
認知症が進行すると、自分の記憶が定かではないことへの恐怖や、1人で過ごす時間への強烈な寂しさを感じるようになります。
「家族の声を聞きたい」「つながっている安心感を得たい」という一心で、無意識に受話器を取ってしまうのです。
2. 「電話をかけたこと」そのものを忘れてしまう
認知症(特に初期〜中期)では、直前の出来事を記憶する「短期記憶」から障害されていきます。
「5分前に電話をして話したこと」そのものをすっぽり忘れてしまうため、ご本人にとっては毎回「今、初めて家族に電話をかけている」という感覚なのです。
3. 時間や予定の感覚(見当識)がぼやけている
「今日は何曜日か」「今は朝なのか夜なのか」「病院に行くのは今日だっけ?」といった時間や予定の認識が難しくなり、確認したくて何度も電話をかけてしまうケースもあります。
「また電話!?」と責めないで!家族が試したい3つの対応法
1. 「さっきも話したでしょ!」と責めずに、まずは一瞬だけ安心させてあげる
何度も繰り返されると「もう何回目!?」と怒りたくなりますが、強く怒られるとご本人は「なぜ怒られたのか」は分からず、「怒られた恐怖と不安」だけが残って余計に電話が増えるという悪循環に陥ります。
「どうしたの?大丈夫だよ」「何か心配なことがあったかな?」と、最初の数秒だけでも優しく声をかけて安心感を与えてあげることが、結果的に電話を落ち着かせる近道になります。
2. メモやカレンダーをわかりやすい場所に貼っておく
予定や時間の確認の電話が多い場合は、黒電話やスマホのすぐ横に「大きな文字で書いたカレンダー」や「今日の予定(〇時にデイサービス等)」のメモを貼り出しておくのも効果的です。
電話がかかってきたら「電話の横の黄色い紙を見てみてね」と伝えることで、ご自身で確認できる習慣がつくこともあります。
3. 日中の「寂しい時間」を減らす環境づくりをする
電話が極端に増える時間帯は、ご本人が自宅で1人でボーッと過ごし、不安が大きくなっている時間帯であることが多くあります。
デイサービスを利用して日中に他者と交流する機会を作ったり、訪問介護や訪問看護を活用して人の目が入る時間を作ったりすることで、孤独感が和らぎ、劇的に電話の回数が減るケースも珍しくありません。
限界を迎える前に!専門職(訪問看護・介護)の力を頼ってください
ご家族だけで1日に何度も鳴る電話に対応し続けるのは、精神的に大きな限界がきてしまいます。
電話が止まらない状態に加えて、
・大切なお金や薬の管理ができなくなってきた
・同じ質問を何十回も繰り返す
・家事や身の回りのことが難しくなってきた
といった変化が見られる場合は、決して一人で抱え込まず、早めに地域包括支援センターや主治医にご相談ください。
プロの手が入ることでご本人の心に大きな安心感が生まれ、結果としてご家族への過度な連絡が落ち着き、介護されるご家族様ご自身の平穏な生活を取り戻すことにも繋がります。
まとめ
認知症の方からの過剰な電話の背景には、ご本人なりに抱えている「強烈な不安」や「寂しさ」が存在しています。
何度もかかってくる電話を「困った行動」として責めるのではなく、「何か不安なのかな?」「生活に孤独を感じているのかな?」と捉え直してみることが第一歩です。
そして何より、介護するご家族様自身が疲れ果てて倒れてしまわないよう、訪問看護や介護サービスなどの専門職を上手に頼ってくださいね。
ご本人もご家族も、どちらも笑顔で安心して毎日を過ごせる環境を、私たちと一緒に整えていきましょう!


